【漫画の処方箋】松田洋子著「ママゴト」

制服JKを描いとけば売れるというこの時代に,何が悲しくて場末のスナックのママ(勿論,JKではない)を主人公に据えたのか。

 

このあたりに絶妙なセンスを感じさせるこの漫画,当職一押しであります。

 

≪成分≫

ストーリー ★★★★★

主人公の設定や凄まじい昭和臭漂う雰囲気,後述する劇画調の絵柄から人を選びそうな感じはありますが,ストーリーは秀逸です。

おそらく,万人受け可能,そして,胸に来るクライマックスなど,どの層にも副作用なく受け入れられると思います。

 

絵柄 ★★★★☆

画力あります。

もっとも,萌漫画描けば売れるこの時代に,どうして脅威のデッサン力で劇画調の漫画を描いたのか。

当職は,そのあたりも大好きなところなのですが,マイルドな萌系絵柄が好みの方にはちょっと向かないかもしれません。

気が付けば引き込まれるストーリーなので,絵柄による副作用の心配は少ないと思います。

 

場末感 ★★★★★

こういう漫画は少ないですね。

場末感,終わった感で言えば闇金ウシジマくんなどがありますが,そういうマジで終わった感の雰囲気ではなく,不思議と暖かな感じのする場末感は,作者のセンスの賜物でありましょう。

 

エロ ★☆☆☆☆

期待しない方がいいでしょう。

個人的には,主人公から漂う大人の色気は好きですが,エロとはまたちょっと違うかも。

 

感動 ★★★

いわゆる泣かせる系ともちょっと違う,不思議な感覚を味わえる可能性があります。

ストーリー自体があまり類を見ない系統の漫画なので,人体に及ぼす影響をステレオタイプの表現で示すのは難しいです。ウサギドロップ系?

まぁ,損はしないから読んでみ。

 

≪ここが凄い≫

この漫画を一言で表すとすれば,「めっちゃ魅力的なキャラクター」でしょうか。

 

2巻ぐらいになってきたら,主人公のセリフ1つ1つが珠玉の言霊となってあなたの心に突き刺さるでしょう。

勿論,主人公のママの他に,ガキんちょもだんだん好きになってくるから,まぁ不思議。

このガキも,眉目秀麗,能力抜群,実は生まれ持った過酷な十字架を背負っている,というような特殊設定のない,ただの小太りなガキなのですが,知らぬ間に好きになってしまうという・・・・。

 

こういう形で人物描写ができるのは,いやはやお見事と言うほかありません。

 

総評 ★★★★☆

この漫画,着手すればスラスラと魅力にはまっていくこと間違いなしなのですが,読むまでにちょっとハードルがあるかもしれません。

ちょっとでも気になった方は是非読まれることをお勧めいたします。

5つ★をつけなかったのは,エロやパンツ,斬った張ったのバトルもの,眉目秀麗な男女が純愛をするような漫画を御所望の方には,どう逆立ちしてもお薦めできないからです。

 

松田洋子著「ママゴト」,是非とも,一度手に取って読んで頂きたい漫画でございます。