【漫画の処方箋】古谷実著「シガテラ」
読みだしたら止まらない,後の展開が気になる,
という漫画は多くあるが,
その中でも,魔法やら格闘技やら過激なエロシーンやらがなく,
それでいて止まらない漫画というのは著者の構成力の賜物であろう。
ちょうど一気読みしやすい巻数で完結し,
なおかつ最初から最後まで気になる展開で終始している漫画で,
上記条件に合致する漫画が,
<成分>
絵柄 ★★★★☆
しっかりしたデッサン力とマイルドな絵柄で,安定感がある。
誰が読んでもアレルギーの出ない絵柄だと思われる。
ストーリー ★★★★★
狂気を秘めた日常生活を描く漫画。
お願い,最悪の展開にならないで!
と心から願ってしまいそうなストーリーは秀逸。
現実的な狂気と小さな幸せが混在した展開は,
読みだしたら止まらない。
エロ ★★☆☆☆
過激な描写はないが,何とも言えないエロさがある。
ただ,過剰な期待を寄せてはいけない。
そういう漫画じゃないから。
バトル ★☆☆☆☆
エロに引き続き,そういう漫画ではないと割り切っていただきたい。
<ここが凄い!>
この漫画の凄さを一言で表現すれば,
「引き込みの強さ」がピカイチであることであろう。
感動するわけではなく,またスッキリするような展開でもないが,
読み手を引き込み,見たくないのに見てしまうような物語展開は,
読み物として高く評価されるべきであろう。
バトルものや感動もの,魔法やファンタジーは食傷気味だが,
一気に引き込まれる漫画を手軽に楽しみたい,という方には,
かなりおすすめできる漫画である。
<備考>
本作以外に「ヒミズ」「わにとかげぎす」「ヒメアノ~ル」「サルチネス」など,今回ご紹介した「シガテラ」と似たような道具立ての漫画を複数出されている。
各作品の誤差は,ドラえもんとキテレツ大百科ぐらいの誤差であろうか。
「シガテラ」がマッチする方にはほかの著作についてもおすすめできるところであるが,当職としては,この一連の作品群の中で最も完成度が高いのは「シガテラ」であると思料する次第である。