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【漫画の処方箋】岩明均著「ヒストリエ」

当職は,歴史系の漫画を好む。

さらに,戦争系の漫画も好きである。

 

歴史×戦争系の漫画は,探せばいくらでもあるジャンルであろう。

ただ,多くあるからこそ,いささか目が肥えてしまった感も否めない。

 

ここでいう,「目が肥えてしまった」とは,

客観的に違いが判るようになった,のとは異なると思われる。

主観的に違いが判るようになったのである。

 

つまり,「自分好みの漫画が何なのか」ということについて,

自分でわかるようになってきたのである。

 

当職が,ごく勝手に「あんまり評価しない」漫画のカテゴリーがある。

押し付け感動系の漫画である。

「ホラ,ここが感動するところやで!ホラ!」

こういう演出が透けて見えるような漫画は,どうにも苦手である。

 

勿論,導入から自然と感嘆が生まれる漫画が素晴らしいに越したことはないが,

まれに押し付け感動系のくせに,不覚にも感動してしまうものもある。

たとえば,末次由紀著「ちはやふる」など,

押し付けが強すぎて毎巻感動する羽目になる。

パワーゲームができるのも腕である。それはそれで,素晴らしい。

それだけの熱量を出せる方はなかなかいない。

 

今回ご紹介する漫画,岩明均著「ヒストリエ」は,

「押し付け感動系」とは一線を画する漫画である。

 

<成分>

絵柄 ★★★★☆

パッと見では非常に淡泊な絵柄であり,

宮下英樹著「センゴク」をコッテリとするならば,完全に「アッサリ」である。

しかし,作品の雰囲気とマッチしているため,

読んでいてアッサリ風味が目につくことはなく,非常に自然。

 

ストーリー ★★★★★

若干到達点が不明な部分があるものの,

ちょっと他に類を見ない進行,えっと思わせる意外性がそこにある。

感動する類のものではないが,

さすが「寄生獣」で名をはせただけはある,

岩明均先生ならではの秀逸なストーリーを楽しめる。

 

着眼点 ★★★★★

この時代のこの人物を選んで,

なおかつ本気で漫画にするあたり,

他にライバルがほとんどいない時代着目がなされている。

戦国時代や三国志などは散々テーマにされているが,

この時代での本格歴史漫画は珍しい。

 

エロ ★★☆☆☆

スパイス程度に。

 

<ここが凄い!>

この漫画の凄いところは,なんといっても「力が抜けている」ところと言えよう。

無論,いい意味である。

本記事冒頭にも記載したが,当職としては,どちらかというと,

感動押し付け系より,自然体の力が抜けた漫画の方が好きである。

この「ヒストリエ」は,結構とんでもない展開であっても,

アッサリと表現し,あとくされがない。

読んでいて,急展開なのにそれであることに一瞬気が付かないレベルである。

このあたりは,岩明均先生ならではの風味といえようか。

 

さらに加えると,この漫画,力が抜けているから気が付かないが,

相当な冒険譚である。

今思い出して,ああ,そうだったと思えるぐらい自然である。

普通の著者ならば,これでもかと押すところを,押さない。

そのあたりが非常に好感のもてる漫画である。

 

数ある歴史漫画の中でも,当職一押しである。