【漫画の処方箋】都留泰作著「ナチュン」
いい雰囲気の漫画の平置きがあると,足を止めて眺めるのは国民の義務であろう。
その漫画に試し読みが付いていれば,少し拝読するのが紳士のマナーであろう。
今回ご紹介する漫画「ナチュン」と当職が出会ったとき,当漫画は1巻丸ごと試し読み可能な状態であった。
いくら,紳士とはいえ,1巻丸ごと試し読みするのは,心身の労力(当職は当時,頑固な痔主であり,長時間一定姿勢を保つのは苦行であった),時間の浪費を考えると,あまり現実的ではない。
しかし,据え漫画読まぬは漢の恥,当職は,折衷的に,少し試し読みすることにした。これでマナー違反にはなるまい。
不味い料理を最後まで食べる義務はない。
国民には,面白くない漫画を読まない自由も保障されている(はずである)。
当漫画には,ポップが付いており,「SF大スペクタクル!」とある。
えらく大上段な構えできているが,果たしてどんなものか。
少し読んでみると,ほとんどSFチックな要素はない。
なるほど,沖縄を舞台にしているだけあって,沖縄の描写は非常に精緻である。
さらに読んでみた。
まだSFチックな雰囲気はない。
気が付くと,1巻読み終わった。
1巻には,ほとんどSFチックな要素はなかった。
全然SFやないやんけ!
しかし,問題は,ポップが虚偽かどうかではない。
なんの変哲もない沖縄の描写だけで,痔主の当職が,目を離すこともできず,1巻読み切ってしまうことにある。
凄まじい読ませる力を感じた。
当職は,出ている巻を全て購入した。
≪成分≫
ストーリー 途中まで ★★★★★
締め ★★★☆☆
買ってよかった!と思わせる激動の展開が待ってました!
20世紀少年のような,次の展開を熱望してしまう脅威のストーリー,1巻ののんびりした雰囲気は?と思わせる,広がるスペクタクル!
まず,途中までは損しません。間違いありません。
読めばわかります。1巻全部を試し読みさせる必要があったのです。むしろ,本来ならば2巻のはじめぐらいまで試し読みしないとわからないかもしれません。
この漫画を1巻丸ごと試し読み可とした書店員は,漫画のことを良くわかっていると思います。
英断です。当職,喝采を送ります。名乗り出てくれれば一席ご馳走したいぐらいです。
しかし,締めについては,当職納得いっておりません。
なぜ納得いかないかは,ご自身の目で確かめるのが紳士淑女のマナーでしょう。
絵柄 ★★★☆☆
精緻な描写で丁寧な記載ですが,キラキラっぽさや萌要素はほとんどありません。また劇画でもありません。
特徴的な絵柄ではないことから,読み手にアレルギーを生じさせることはほとんどないでしょう。
ただ,絵柄買いをすることもないと思います。
エロ ★★★★☆
ちょっと読んでもらえるとわかるのですが,あんまりエロさを感じさせません。
この漫画でどうやって興奮すんの?という展開からはじまるのですが,いやはや,これがまた,ちゃーんとお楽しみがあるのですな!
しかし,ご褒美タイム,お約束という感じのエロではなく,ストーリー上必要なエロス,そしてなんかよくわからんけれど無駄に興奮する描写力。
想像力豊かな方ほど,無駄に興奮すること必至!
≪ここが凄い!≫
人にもよるのかもしれませんが,この漫画の凄さを一言で述べると
「圧倒的雰囲気」
です。
ストーリー等の秀逸さばかり目立っておりますが,当職は,あえてこの漫画を「究極の雰囲気漫画」とさせていただきたく思っております。
これは読んだ人にしかわからない。
ガキのころ,はじめて金曜ロードショーでラピュタや老人Zを見た変な興奮とソワソワ感を大人になっても味わえるはずです。
ただ,万人にこのソワソワ薬効が効くかどうかはわかりません。
幼少期にテレビでジブリの再放送をやっていて,それを見て興奮できた層には効くんではなかろうかと思います。
効くか効かないかは,読んでみなければわからない!
面白そうだと思った諸兄は,ぜひ一度読んでもよろしいのではないかと思います。